1.バイリンガルキッズにとっての日本語能力試験とは
海外に住む私たちのバイリンガル日本語教育において、年齢が上がるほど難しくなってくるゴール設定。
現地校での学習や活動が忙しい中、何を目標に日本語学習を続けるか、どこまで続けるのか、優先順位はどうするのか、という問題が出てきます。
イギリスのように、GCSEの一科目として日本語受験が認められている国では、その試験が1つの目標にもなり、モチベーションにもなりますが、そういった基準となる試験がない場合、日本語学習を続けてもゴールが見えない、わからないということになってしまいます。
日本語能力試験は日本語が母語の人向けではなく、ほぼ母語に近い第二外国語として日本語学習をしてきたバイリンガルの子どもたちにとってふさわしい試験かどうかというのは、判断が難しい部分でもあります。それでも日本語学習を頑張ってきた子どもたちにとっての、一つの目標やゴールになり、そしてどの程度の日本語力があるかをわかりやすい形で証明できるものにはなるのではないでしょうか。
また年々海外からの受験者が増えており、申し込みは受験日の約半年前にも関わらず開始と同時に枠がいっぱいになることも少なくありません。早めの準備と情報収集で年に2回のチャンスを逃さないようにしましょう!
2024年12月の試験申し込みは7月9日に開始されます。
お見逃しなく!
2. 日本語能力試験とは?
1.日本語能力試験の概要
日本語能力試験とは、日本語を母語としない人たちの日本語能力を測定し認定する世界で同時に実施される唯一の試験です。2023年(令和5年)7月に実施された2023年第1回日本語能力試験では、日本を含む世界55の国・地域から、602,140人が受験し、年々受験者が増えています。
2.どんな人が対象か
日本語を母語としない人が対象で、年齢も国籍も関係ありません。
ただし、補習校などで勉強してきたり、家庭にネイティブの日本語がある環境の海外在住バイリンガルキッズは、日本語を『母語』として学習してきているので、受験の場合にはそれに向けた学習がおすすめです。
3.日本語能力試験を受験するメリット
日本の補習校に通っていた、日本語学習を小さい時から続けていた、といってもその実力を測る物差しがなければ、それを証明することは難しいものです。N3以上は履歴書等にも書くことができると言われているように、日本語能力試験を受験する一番のメリットは、その能力を公的に証明できるという点です。
また、以下の日本の国家試験等の受験資格にはN1が必須なので、将来的に日本での仕事などを検討している場合には、役に立ちます。
医師、歯科医師、看護師、薬剤師、保健師、助産師、診療放射線技師、歯科衛生士、歯科技工士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救命救急士、言語聴覚士、獣医師、愛玩動物看護師、准看護師、
・日本語能力を公的に証明できる。
・N1があれば日本の国家試験等の受験資格を得ることができる。
・N1,もしくはN2があれば、日本の中学校卒業程度認定試験で一部の試験科目の免除が受けられる。
4.日本語能力試験の日程
試験は年に2回、7月と12月に行われます。場所によって年に一度のところと二度あるところがあるので、確認が必要です。
5.試験の内容
試験の内容は5つのレベルに分かれていますが、それぞれに文法、語彙、言語知識を問う問題と、読解、ヒアリングで構成されますが、すべて選択マーク式で記述や作文、面接などはありません。
選択マーク式なので、比較的、受験しやすいといえます。
試験の特徴
・レベルは一番やさしいN5から、難しいN1レベルまで5段階にわかれている。
・文字、語彙、文法などの言語知識を問う問題と、読解、ヒアリング(聴解)で構成される。
・すべて選択マーク式で、面接や作文、記述はない。
6.レベルの目安
それぞれの認定の目安は以下のようになっています。受験レベルを選ぶ際の参考にしてみてください。
N1
幅広い場面で使われる日本語を理解することができる。
【読解】
・幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、 文章の構成や内容を理解することができる。
・さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現や意図を理解することができる。
【ヒアリング】
幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。
N2
一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現、意図を理解することができる。
【読解】
日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
【ヒアリング】
日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。
N3
日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる。
【読解】
・新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。
・日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。
【ヒアリング】
日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる
一般的に、補習校などに通っている場合、小学校終了程度~中学生ぐらいのレベルであれば、まず最初に受験にチャレンジするといいレベルとなっています。
N4
基本的な日本語を理解することができる。
【読解】
・基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
【ヒアリング】
・日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
N5
基本的な日本語をある程度理解することができる。
【読解】
・ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読んで理解することができる。
【ヒアリング】
・教室や、身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる。
3.海外から日本語能力試験を受験するには
1.試験までの流れ
2.受験できる場所・日時を調べる
まず受験を決めたら、海外の実施都市・実施機関一覧で、受験可能なところを調べましょう。
海外からの受験の場合、締切が早いこと、受験のための申し込み資料をそろえるのに時間がかかること、何事もスムーズにいかないのが海外あるあるですので、早めのリサーチ、問い合わせをおすすめします。
また、日本語人気は相変わらず高く受験者も増えている反面、受験者数に限りがあるところも多いようなので、申し込みが開始されたらすぐに申し込むよう準備しましょう。
3.【受験例】ドイツ・シュツッツガルトで受験する場合
上記の海外の実施都市・実施機関一覧から、西欧→ドイツと調べると、4か所試験を実施しているところがあるので、シュツッツガルトのリンク先から探します。
VHSシュツッツガルトの日本語能力試験概要から詳細を調べます。
ここから、2024年12月1日受験の申し込みについて、以下のことがわかります。
・申し込み開始は2024年7月9日火曜日~8月22日まで
・先着350人まで
・受験料 65ユーロ
受験料はだいたい同じぐらいのようですが、人数が会場によって違い、早いもの順なので、なるべく申し込み開始日に申し込むのがよさそうです。
シュツッツガルトは12月のみの受験でしたが、ハンブルグ(先着100名)、デュッセルドルフは7月、12月の年2回受験ができるようですので、詳細は各自ご確認ください。
まとめ
海外からも受験できる日本語能力検定。お子さんの学習の進捗確認の1つのツールとして、目標として、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
今後、KAZAHZANA JAPANESEでは、日本語能力試験に関連するワークシート、オンラインレッスン、役に立つ情報発信をしていく予定です。一緒にバイリンガル子育て、がんばりましょう!