イギリスで日本語学習を続けていく中で、一つの目標にもなっているGCSE日本語受験。2025年度もKazahanaからは10名の生徒さんが受験をされ、全員が『グレート9』を取るという快挙!『親が日本人なら簡単』『補習校に行っていれば当たり前』と思われがちですが、GCSEの日本語受験というのは補習校での『国語』としての学習とは異なり、『文法的に正しく』『多面的なものの見方、考え方』ができているかを総合的に問われる試験です。4つのペーパーを3日間に亘って受験し、ほぼ90%の得点ができなければ達成することはできないのです。
今回は、6歳までフランスで育ち、その後はイギリスでと日本語だけでなく3か国語を操るトリリンガルで、今年Year9で受験し、最高グレート9という見事な結果を残したJさん親子にGCSEのこと、日本語教育のこと、バイリンガル育児について、お話を伺いました。
受験者DATA Jさん
◆受験年 2025年
◆受験年齢 13歳 (YEAR9)
◆日本語学習歴 補習校2~3年生/個人学習塾/オンラインレッスン
◆GCSEスコア グレード9
まず、これまでの日本語教育についてお母様にお話を伺いました。
1.日本語教育について
(1)幼少期~小学生まで
ー小学3年生までフランスにお住まいだったということですが、どのような形で日本語教育を始められましたか?
生まれてすぐの頃は、家庭内では英語のみで通していました。当時はフランスに住んでいて、イギリス人の父親は英語のみ、そこで私も日本語を使うと三か国語になってしまい、最初の段階で混乱するかなと思っていたからです。ところが、1歳ぐらいで日本に里帰りをした時に、他の子どもの話している言葉や、いらっしゃいませ~、など日本で聞いた言葉のマネをし始めたんですね。そして驚いたことにフランスに帰ってきた後も、自然と日本語の言葉を発するようになっていたのです。
その時、もしかしてこの子は三か国語でもだいじょうぶなのかもしれないと思い、そこから私は完全に日本語で話しかけるようにしました。それ以来、娘との会話は完全に日本語です。
ただ、保育園ではフランス語のみだったので、当時の語学の割合は、一番がフランス語、二番目が一緒にいる時間の長い私からの日本語、三番目が父親からの英語、という順番でした。
ーお子さんが小さい頃はどのように日本語に触れていましたか。
私との会話を日本語でしていたほか、私が本好きだったこともあり、小さい時から毎晩本の読み聞かせをしていました。私たちが住んでいたところからスイスのバーゼルが近く、インターナショナルな都市だけに図書館の蔵書が充実しており、各国の本もそろっていました。そこで10冊まで本を借りられたので、毎週日本語の絵本を5冊、英語の絵本を5冊借りて、毎晩1冊ずつ読む、ということをしていました。このことで、語彙力と表現力の基礎が身についたのかなと思います。
国際色豊かなバーゼルにある子供と青少年のための多文化図書館JUKIBU。
JUKIBUには現在50か国以上の言語の図書があり、日本語メディアに関しては、昔話から、文部省推薦図書、現在日本で人気の絵本、マンガ、お母さんへの育児本、紙芝居、DVD等現在約700冊を所蔵しているそうです。
GGG Bibliothek St. Johann JUKIBU
Lothringerplatz 1, 4056 Basel
Tel. 061 322 63 19
stjohannjukibu@stadtbibliothekbasel.ch
―小学校が始まってからはいかがでしたか?
小学校一年になり、大使館から日本の教科書が届くと、国語の教科書に沿って、自宅で読み、書きの勉強と、しまじろうのチャレンジゼミを始めました。自宅学習で親が教えているとだんだんと反発も始まるので、小学2年生からはフランスの補習校に通いました
その後、3年生の途中でイギリスに引っ越しましたが、近くに補習校がなく、友人のやっている個人塾で主に国語と社会科の教科書に沿った学習を、6年生の途中まで3年間行いました。とにかく宿題をさせるのが大変でしたが、出された宿題は必ず終わらせるようにしました。学校での言語が英語に変わり、本人も大変だったと思いますが、その時も私とは完全に日本語で会話していました。
(2)中学生~GCSE受験まで
―中学生になってからは、どのような学習をされましたか?
GCSEの勉強を始めるまでの約2年間は特に勉強らしい勉強はしていませんでしたが、せめて漢字を忘れないよう、就寝前に日本語の本を1ページ読ませるようにしていました。
―そのころ,どのような本を読んでいましたか?
特に気に入っていたのは『放課後ミステリクラブ』や『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』『ざんねんないきもの事典』などでした。

本を選ぶときには、ひらがなが多い本は読みくかったり、難しい漢字が多くてふりがながないものは本人のモチベーションも下がってしまうので、簡単すぎず、難しすぎず、且つ本人が好きな、且つ本人が好きなジャンルのミステリー本や推理小説、探偵もの、などの本を探して、一時帰国の度に大量にイギリスに持って帰ってきていました。また、個人塾の先生も様々な本を中古で買ってきては、みんなで順々に読んで、それを売ってまた日本で買ってくる、というサイクルで回してくださっていたので、常に本が身近にあるという環境でした。
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ちょうどいい本を選ぶのは、『難しすぎず、簡単すぎず』。
ひらがなばかりでは、漢字をなかなか覚えないので、フリガナがふってある漢字が多いものが高学年以降はおすすめです。
(3)GCSE受験
―Kazahanaオンラインレッスンを始めたきっかけと、やってみての感想はいかがでしたか?
近くに通える補習校がなかったので、GCSE対策はオンラインでしようと思っていました。2つの教室にメッセージを送り、返信や対応が早かったのでこちらのレッスンに決めました。
ウェブサイトを見て問い合わせたのが9月、レッスンを始めたのが翌年1月からだったので、私としては単語や漢字などが準備不足ではと思っていて、正直9を取れる自信はありませんでした。結果的にはよかったのですが、先生がおっしゃった様に、試験準備には1年程あると余裕があって良かったかなと思います。でも実際にレッスンを受けてみて、無駄のない最短距離の勉強法で試験に臨めたと思います。
2.これまでの日本語教育をふりかえって
―これまでの日本語学習で難しかった点と、効果的に学習するためのヒントはありますか?
文章を書くことと漢字は難しかったですね。七田式教育の教材を使っていたご家庭では、お子さんの作文力、漢字力がずば抜けていたので、うちでもやってみましたが、文を書く習慣がついておらず猛反発をされ、長く続きませんでした。
それぞれのお子さんに合うやり方、教材があると思いますが、本をたくさん読むことと、一年生から簡単な作文を書くことに慣れさせ、漢字を反復で何度も何度も書かせる勉強法はとてもいいと思います。高学年になればなるほど漢字も難しくなり、反復をしないと習ってもすぐ忘れてしまうので、繰り返し学習するということが大切だと思います。
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―ここまで日本語学習を続けてこれたのは?
ひとえに補習校や個人塾で教えて下さった先生方のおかげです。補習校や個人塾がなかったら絶対にここまで続けられてはいなかったと思います。『GCSEまではがんばろう』というのを目標にしてきたので、ここまでたどり着けて本当に嬉しく思っています。
―最後に、海外で日本語教育を頑張っている方へ、学習のモチベーションを保っていく秘訣を教えてください。
最終的に子どもの日本語力がどこまで伸びるかは、親がどれだけ日本語教育にコミットできるか次第と感じています。高学年になるにつれ、日本語の勉強への反発が強くなって、続けるのが難しい時期がきますが、目標を共有して、コツコツ続けていくことが大事だと思います。
うちではやる気がなくなるたびに、『三か国語を勉強して話せるチャンスがあるんだから、それができる人生と、それがないのとどちらがいい?』『日本語ができたら、日本に行った時やこれからの人生で仕事をする上でもこんなメリットがあるよ』と毎回説得して、子どもに納得させたうえで、勉強を続けてきました。
親も根気よく子供と話して納得させる、日本語ができたら世界が広がるという未来図を描かせる、ということが大事ではないでしょうか。






どうもありがとうございました。
『日本語ができたら、こんなに楽しいよ』ということを根気強く伝え続けることが大事ですね。
次にJさんご本人に、インタビューです。
3.GCSEを受験してみて
ーGCSEの結果がでて最高グレード9を取りましたね!今はどんな気持ちですか?
9を取るのは難しいかなと思っていたのですが、9という結果でとてもうれしかったです。
今は試験が終わってほっとしています。
ーGCSEのためにどんな勉強をしましたか?
オンラインレッスンを週に一度受けて、出された宿題をしたことと、漢字リストを見ながら、漢字を書く練習をしました。
ー試験では、これまでのどんな勉強が役に立ったと思いますか。
過去問をたくさん解いたことが役に立ちました。どの質問も同じようなパターンで何回も練習していたので、試験本番でも『やったことがある』と思えてよかったです。
オンラインレッスンでは試験で何が出るのか、問題の解き方、ヒントを教えてもらっていたので、本番でもスムーズに回答することができました。
ー日本語を勉強していてよかったと思うのは、どんな時ですか。
日本に行って、日本語が話せる時と、日本のテレビ番組が吹き替えなしで見れる時です。
―三か国語を話せるということですが、今は3つの言葉のうちどの言葉が強いですか?
やってることによって違います。例えば算数の勉強をしている時は日本語で考えているし、学校で学ぶ他の教科は英語で、日本のドラマを見ている時や母と話している時は日本語です。自分の気持ちや考えを伝えるのに、それぞれの言語でスイッチが入るので、混ぜて話したり考えたりすることはありません。
―どんなことが日本語の勉強になると思いますか。
お母さんと日本語で話すことと、日本のテレビを見ることも勉強になると思います。後は日本の家族や友達と実際に話すことは、その会話からいろいろな言葉を覚えたりするので役に立ちます。
ーあなたは日本のどんなところが好きですか。
おもちやたこやきなどの食べ物と、ユニークでかわいいサンリオなどの日本のキャラクター、アニメカルチャーなどです。
ーあなたの好きな日本語は何ですか。
『アンニャロー』(響きがかわいい)
『バイバイキン』(バイバイとバイキンをかけているところ)
―将来、日本語のスキルをどんなことに使いたいと思いますか。
将来は国際弁護士になりたいと思っているので、仕事で使いたいです。
― 日本語をがんばって勉強している方たちへ、メッセージをお願いします。
小さくても毎日の積み重ねが大事だなと思います。勉強したことは必ず結果につかながると思うので、将来こうなったらいいなという気持ちで、目標を持ってがんばってください。






お話、どうもありがとうございました。Jさんは表現力が豊かで様々な言い回しができることにいつも感心していましたが、やはり小さい時から本に囲まれた生活をしていたんですね。
本選びは内容、レベルともに選ぶのが難しいですが、ぜひおすすめの本をヒントにしていただき、学習の参考にしていただければと思います。
『千里の道も一歩から』
毎日の小さな積み重ねがあってこそ、気づけば遠かったゴールに近づいているということですね。







